【那須学Q&A14】小説「山医者」シリーズで知られる那須の医者で作家であった人とは?

那須高原・那須町の著名人のナンバーワンと言えば、名誉町民で医者・作家でもあった、那須町民なら誰でも知る……
答え 見川鯛山みかわたいざん先生 (本名:見川泰山 1916~2005)でしょう。

1945年(昭和18年)に、那須湯本温泉診療所(現在の見川医院)を開いた医師で、当時、那須高原ではただ一人のお医者さんでした。

<那須の著名人No.1の見川鯛山先生 写真提供:見川医院
那須・見川鯛山先生

見川鯛山著 山医者の毒にも薬にもならない話 表紙見川鯛山先生は、診療所開設から、60年以上にわたって地域医療に従事する傍ら、おもしろい話を書く作家としても知られた有名人でした。
著書は、那須の風土に根ざした那須の人々をモデルに、独特のユーモアと優しさで描いた短編小説「山医者」シリーズや随筆は14冊、実に400編にものぼります。
見川鯛山先生の主な著書は
「田舎医者」 角川書店
「医者ともあろうものが」 毎日新聞社
「田舎医者」「本日休診」 毎日新聞社
「山医者のうた」「スキー万歳」 毎日新聞社
「山医者の読みグスリ」 毎日新聞社
「山医者の毒にも薬にもならない話」 ドリーム舎
「見川鯛山、これにて断筆」 フーガブックス 他

上の写真は、故見川鯛山先生著の大人の絵本表紙・・・「山医者の毒にも薬にもならない話」
この本の挿絵は、見川鯛山先生の娘であるイラストレータの米倉万美よねくらまみさんが描いています。

見川鯛山先生は、2006年(平成17年)8月に88歳で亡くなられましたが、今でも那須では「おもしろい偉い先生」と慕われています。

<見川鯛山先生の最後の著書「見川鯛山、これにて断筆」(フーガブックス絶版)
那須・見川鯛山先生の最後の著書
<読者への手紙が付けられて発行された最後の著書「山医者のちょっとは薬になる話」>
那須・見川鯛山先生の最後の著書


鯛山先生が亡くなられたあと、2007年TBSテレビの「筑紫哲也 NEWS23」でも、“変わらない人の心に寄り添う医者”として取り上げられました・・・。(Youtubeの動画をご覧になれます)
〈見川鯛山先生 筑紫哲也NEWS23 Youtubeから〉

本日は休診


見川医院は現在、故見川鯛山先生の長男である見川泰岳先生が引き継いで医院長として診療にあたっています。

父鯛山先生のことを泰岳先生は「父は人として成功したかどうかは判らないが、『生き物として生きた成功者』だと思う」と語っています。那須の自然の中で生きる鳥でも猿でもすべての動物を愛し、その中で自分も生き物として生きたと、その強い姿を泰岳先生は振り返ります。

<今は亡き父・見川鯛山先生と後を継いだ見川泰岳先生>
那須・見川鯛山先生と泰岳先生

「父鯛山は、私に医者になれとは一言も言ったことはなかったですね」と泰岳先生。
「でも風呂に一緒に入ったときに手桶にお湯を入れて、それを手でコンコンと叩き『お湯があるときと無い時では音が違うだろう、体の中の音を聞くというのもこういうことだ』と教えてくれました」
その言葉が、泰岳先生を医者の道に進むきっかけとなったと「今は思える…」と泰岳先生は語ってくれました。

<患者さんの心に寄り添う診療の故見川鯛山先生 写真提供:見川医院
那須・見川鯛山先生診療風景

また泰岳先生は父との思い出をつづけて「ある時父鯛山は、『毎日日記をつけろ、一言でもいい。何も書くことが無かったら何もナシでもいい、とにかく毎日日記を書いたら1日につき10円やろう』と言ったんです。その時は10円が嬉しくて毎日頑張って日記を書き続けました。1か月で300円ですからね」
しかしやがて、お金をもらうという嬉しさとは別の気持ちが泰岳先生の心の中には芽生えた・・・。

「毎日書いていたら、そのうち毎日書くことが楽しくなってきたのです。お金をもらうことよりも書くことの方がずっと自分にとって楽しく嬉しい時間になった」と。

作家としての父・鯛山先生が教えたかったのは“書くことの楽しさ”だった、それを気づかされた、としみじみと話す泰岳先生。さらに付け加えて一言「それを知ってからはお金はもらわなくなりました(笑)」と・・・。

<故見川鯛山先生の執筆原稿「男爵の家」>
那須・見川鯛山先生の執筆原稿

息子・泰岳先生がの父・鯛山先生の診療を日々見ていて“医者というものは楽な職業だ”と思っていたという。
1日のうちで診療をするのは2~3時間だけ、それもただ患者さんとひたすら話をして、出す薬は決まって2種類のうちのひとつだけ。
また、時には診療所にいる九官鳥に「今日は鯛山先生はお出かけです」という言葉を教えて、誰か来たらその言葉を言わせるように仕向けたという。(ただこの話には落ちがあり、奥様にも同じことを言わせようと鯛山先生が奥様に話した言葉を、そのまま九官鳥は覚えてしまって、来た人に余計な言葉まで口に出してしまった・・・)
そんな父・鯛山先生の姿を見て泰岳先生は育ち、結果的には医者となり父の後を継ぐことになった。

<故鯛山先生の往診風景 写真:フーガブックス「見川鯛山先生のイキカタ」から
那須・見川鯛山先生の回診写真

故・見川鯛山先生は医者としてもさることながら、プライベートの方もアクティブであったという。80歳にしてBMWのカブリオレを乗り回すハイカラぶりを見せ周りを驚かせた♪ この車は今でも泰岳先生が大事にしている。

〈自慢気に赤いBMWに乗る故鯛山先生 写真:フーガブックス「見川鯛山先生のイキカタ」から
那須・見川鯛山先生のBMW

患者さんへの思いやりは、そのまま家族にも向けられていた。泰岳先生にとっても父のことを語るには、語り尽くせないたくさんの思い出があるという。そして日々の家族との写真も多数残されている。

<家族に囲まれる故鯛山先生 写真:フーガブックス「見川鯛山先生のイキカタ」から
那須・見川鯛山先生の家族写真

故見川鯛山先生の写真や資料は、見川医院の二階の仏間に納められています。
仏壇の前には笑顔の故鯛山先生の大きな写真が壁に掛けられ、きれいに花が飾られた花瓶前のチェアーには、奥様と鯛山先生の写真が並んで置かれ、奥の座卓周りには原稿・書籍・掲載新聞・鯛山先生の額入り写真などが多数陳列されています。

<仏壇の奥には故鯛山先生の写真や資料が並ぶ>
那須・見川鯛山先生の位牌のある仏間

この部屋には、父鯛山先生と息子泰岳先生の思い出とともに、ひとつ一つの品には語り尽くせない思いも詰まっています。泰岳先生の言葉も気持ちもこの部屋ではやや高潮気味に……。
泰岳先生いわく「父・鯛山の読者の方なら、いつでもこの仏間に来て頂いて結構です。そのための部屋でもあるのですから」と嬉しいお言葉。(ただいらっしゃる時には事前に連絡を入れてくださいね♪)

<父・故鯛山先生の思い出を仏壇の前で語る見川泰岳先生>
那須・見川鯛山先生の位牌の前で見川泰岳先生

那須温泉診療所・見川医院の医院長である見川泰岳先生は「医術は、温かい思いやりの医療。治療の基本は『人をまるごと癒す』こと」という基本姿勢で患者さんの診療にあたっています。これは見川鯛山先生が抱いていた、地域に密着したきめの細かい医療活動の精神に通じ、いまも見川泰岳先生によって脈々と受け継がれています。

<那須温泉診療所の看板を掲げている見川医院>
那須・見川医院の建物

現見川医院は毎日、待合室があふれるくらい多くの患者さんで埋まります。診療科目は、内科・小児科・心療内科・精神科で、もともと泰岳先生の専門は精神科医。それだけに患者さんの気持ちを大切にする診療を一番大事にされています。患者さんは、そんな先生の心に触れて、病を癒されたくて見川医院に足を向けます。

また見川医院には、いままでの概念を変えた入院施設“療養宿”があります。ここは入院された方が、本当の安心感を抱いて、治療に専念できる環境づくりがされています。
さらに、ターミナルケア対応サービス付高齢者向住宅として“文月庵”があり、患者さんに寄り添った本物の医療がここ見川医院では日々続けられています。

那須・見川泰岳先生の見川医院


見川医院の基本姿勢が垣間見れる動画があります。
見川泰岳先生の医師としての優しい人柄も画像に記録されていますので、ぜひご覧下さい。こちらもYoutubeからの動画です。

<温泉診療所 ~医者と少年と母親と~ 映像11>

見川泰岳先生 映像'11①


最後一つプラス情報です、見川泰岳先生がモデルとなった漫画をご存知ですか?
漫画家の石川サブロウ氏が描いた「本日は休診」というタイトルで、漫画サンデーに連載されました。その第一話をこちらからPDFでご覧になれます。漫画「本日は休診」(1)
第2話以降は見川医院のサイトでご覧下さい……。

〈Dai〉


<見川医院の周辺地図>

那須高原湯本 見川医院
〒325-0301
栃木県那須那須郡那須町湯本212
Tel:0287-76-2204


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那須学物語【那須学Q&A】は、那須町・那須高原・那須エリアのことをQ&A方式で解説していくものです。参照元情報は、社団法人那須観光協会発行の「那須検定公式テキストブック」「那須学物語」などを参考にしております。これらの情報が那須に移住しようとお考えの皆様方の、那須の知識を増やし那須人になるきっかけになればと思います・・・。

choko4※那須高原の那須町に移住してきた筆者が、那須にとけ込んだ人を“那須人(なすびと)”と称し、那須好きの人たちに那須の様々な観光情報を提供することで、“那須人”になってもらいたいと、このブログを開設しています。何か知りたいこと、聞きたいことがありましたら《Contact Us》までどうぞ。




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