那須岳という名前の“頂”は存在しないことは、以前にもご紹介しましたが、今では那須連山の主峰“茶臼岳”の別称としてもいられることが多くみられます。
「日本百名山」の著者である深田久弥は書中に、『那須岳とは那須五岳の中枢を成す茶臼岳、朝日岳および三本槍岳のこと』と記しており、那須岳が那須連山の総称として用いられていたことを物語っています。
以前の記事は下記でご覧ください
那須連山は、関東地方の北限、那須火山帯の南端に位置し、広い裾野を持つ成層火山で、噴火口は主峰《茶臼岳》の山頂部にあり、現在も蒸気と火山ガスを盛んに噴出しています。
《朝日岳》と《三本槍岳》はすでに噴火活動を終えています。那須連山で標高が最も高いのは《三本槍岳(1,917m)》で、主峰《茶臼岳》の山頂より2m高くなっています。
那須連山の主な峰5つが『那須五峰』と呼ばれ、那須高原からもその雄姿を見ることができます。
下の写真は標高500mの那須高原から4月20日に撮影したものです。桜が満開で、那須連山の雪は例年よりずっと少なく、地肌の露出が多くなっています。一番高い山が茶臼岳で、その右側に朝日岳と三本槍岳がクッキリと見えます。
答え 那須五峰は次の5つの峰です。下の山岳写真の矢印の峰が那須五峰で、右から・・・
●三本槍岳(栃木県那須塩原市、福島県西白河郡西郷村):標高1,917m。那須岳の最高峰。黒羽藩、白河藩、会津藩の三藩が山頂に槍を立てて境界を確認したことから命名された。低木など緑も見られる。三本槍岳という勇壮な名称を冠するが、実際には山頂部は丸く狭い。
●朝日岳(栃木県那須郡那須町):
標高1,896m。最も峻険な山体を有する鋭鋒で、那須穂高とも呼ばれる。山頂部狭い。山体は岩場やガレ場が多い。山頂部に緑は殆ど無い。峰付近からの眺望は素晴らしく、茶臼岳の噴煙も間近で見られる。
●茶臼岳(栃木県那須郡那須町):標高1,915m。日本百名山のひとつ。那須五峰の主峰で、白い噴気を上げる活火山。山頂部は非常に広く、噴火口に近い区域は硫黄の臭気が漂う。山頂部に緑は殆ど無い。ロープウェイで山頂まで容易に登れる。
●南月山 :標高1,776m。茶臼岳の西南に位置し、姥ケ平を一望できる尾根山で、ミネザクラで有名。西には火山灰によってできた湿地原や沼原がある。
●黒尾谷岳 :標高1,589m。那須五峰のうち最も標高が低い山で、南に伸びる稜線は美しい。那須野ケ原を形成する裾野を眼下に見ることができる。
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那須火山群は約60万年前から活動が始まり、まず始めに北側にある甲子旭岳が60万年前から噴火した。次はそのやや南側にある三本槍岳が40万年から25万年前に噴火し、20万年前から5万年前までさらに南側の朝日岳と南月山が活動した。
これらの火山は流動性の少ない安山岩質溶岩以外に、流動性の良い玄武岩質溶岩も噴出し、現在見られる広大な裾野を形成した。現在噴気活動をしている茶臼岳は3万年前から活動しているが、この山は流動性の少ない安山岩のみを噴出しているため、こんもりと盛り上がった溶岩ドームになった。有史後の噴火は爆発型で泥流を生じやすく、1408年から1410年の活動では茶臼岳溶岩ドームが形成されると共に、噴出し降下した溶岩による火砕流が発生し、犠牲者180余名を出したとの記録が残る。以降は小規模な水蒸気噴火や地震群発を繰り返している。
現在、那須岳の活発な火山活動は、周辺にたくさんの温泉を噴出させている。有毒な火山ガスを出して近づく生き物を死に至らしめる場所もあり、とくに殺生石は有名で、周辺は公園化しており、駐車場も整備されている。ただし、殺生石の周りは危険につき立ち入り禁止である。
<Dai>
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<那須連山の周辺地図>
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