那須街道のショートカットの道であり、テニスコートに行くとき使う道でもある裏道、そこにある【那須オルゴール美術館】は、何度も何度も見慣れた景色の中に存在する建物です。
しかし、実は那須に来て一度も入ったことが無く、今回東京からの客人に同行して入館したのが初めて、という記念すべき訪問となりました。
造形的な建物の外観にも驚かされますが、館内に入って最初に目に飛び込んでくるりっぱなゲート。パリの銀行で使われていた重厚な門は、フランスのシュナイダー工房が製作した、鉄とブロンズ彫刻のすべて手作りの最高傑作品で、【那須オルゴール美術館】のシンボル的存在になっているものです。
オルゴールと言ったら、くし状の金属板を弾いて音色をかもし出す、単純な基本構造の楽器と思っていたら、それはとんでもない話。
音色の美しさを求めて改良されたシリンダー式の色々なものから、1台で何曲も楽しめるディスク式のもの、さらには、迫力満点のオーケストラボックスなど、オルゴールと言えどもその構造と音色には目を見張るものがあります。
ここ【那須オルゴール美術館】には、そんな世界各国から集めた様々なオルゴールが常時100点展示されていて、時間をかけてたっぷりとみて、聴いて、楽しめるようになっています。
広い展示室の正面に飾られてあるのが、『インターチェンジャブル シリンダー オーケストラボックス』で、ローズウッドの美しいケースに入った豪華なオルゴールです。
1860年代にスイスで作られた逸品で、円筒が回転して金属板を弾く“シリンダー式”のオルゴール。円筒をずらしたり交換したりすれば二百曲の演奏が可能で、その曲数などから世界最大級のシリンダー式オルゴールと称されています。
ウッド調の豪華オルゴールは音色も美しい
オルゴールの原型は17世紀頃、スイスの時計職人がカリヨンを鐘の代わりにピンを利用して演奏させたのが始まりと言われます。その後、鐘の代わりに調律した金属片を用いることで小型化が可能になり、円筒形のシリンダーを使う形に変化しました。さらに、オルゴールも時計と同様に「ぜんまい」を使って演奏できる形に進化し、家具のように大型なものから携帯できる小型なものなどに幅広く発展していきました。
オルゴールの音色に合わせて人形が動き鐘が鳴る
19世紀になり、機械技術や加工技術が高度化すると、金属製のディスクにピンが植えられた、“ディスク型のオルゴール”がドイツから現れました。“ディスク型オルゴール”はシリンダー型よりも安価かつ大量に量産でき、ディスクを交換することでシリンダーよりも簡単に曲目の変更ができたため、またたく間にディスク型のオルゴールは普及していきました。
ディスクを交換すると別の曲が聴ける
ヨーロッパやアメリカではオルゴールは家庭で楽しまれることも多く、レストランやパブ、ホテル、駅などでコインを入れて音楽を楽しむ自動演奏装置としても普及しました。
“ディスク・オルゴール”の中には、セットされた10~12曲から選んで演奏できるものもあり、レストランなどではヒットソングを次々入れ替えるなど、蓄音機やレコードの時代のジュークボックスと同様の役割を担っていました。
また大きなオルゴールボックスには、ピアノや太鼓、笛などの楽器を組み込んで演奏の幅を広げた「オーケストラボックス」と呼ばれるものも登場し、オルゴールの全盛期は様々な形で盛り上がりを見せました。
背面の下側にはピアノが、その上に太鼓やシンバルが組み込まれています
そんなオルゴールは、かのエジソンが蓄音機を発明したことで、特にジュークボックスとして置かれていた大型のオルゴールはシェアを奪われ、以後は小型のオルゴールが少数生産されるにとどまる時代へと移ります。
ここ【那須オルゴール美術館】のオルゴールは、アンティークにこだわって展示されており、そのオルゴールの多様性には驚くものがあります。
毎時定時にスタッフが館内を案内してくれる時間があり、いろいろなオルゴールの歴史と音色を、実際のオルゴールとともに垣間見ることができます。
ひとつの時代を創って、現代にまでつながっているオルゴールを、あらためてじっくりと見て、耳で感じてみてはいかがでしょうか。 <Dai>
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那須オルゴール美術館
〒325-0302
栃木県那須郡那須町高久270
Tel:0287-78-2733
営業時間:9:30~17:00(8月は同6:00、1~3月冬季営業)
入館料:大人1000円、中高生800円、小学生600円
手作りオルゴール教室は材料費1700円~で、参加随時受け付け
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<那須オルゴール美術館の周辺地図>
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